利他的な懲罰というものがある

あなたは友人を誘って宝くじを買いに行ったとします。「宝くじなんてあたらないよ」と言う友人に、「まあ、一枚くらい買ってみたら?」と、あなた。「つきあいだから」と友人は一枚だけ宝くじを買いました。

ところが、その友人が買った一枚が、なんと、一億円あたったとします。友人は、誘ってもらったおかげだから、と、1万円をお礼にくれようとします。そのとき、あなたはどう思いますか?

1)「1万円もらえたラッキー」
それとも、
2)「1億あたったのは自分のおかげなのに、たった1万円?」

多くの人は、2)のように考えるのではないでしょうか?単純な利益だけを考えれば、1万円もらえれば嬉しいはずですが、人間は、それ以上に、公平性というものを重視します。

最後通牒ゲームという実験があります。

あなたとAさんが被験者とします。そして、Aさんに1000円が渡され、あなたと分けるように指示されます。そして、Aさんが1000円をどのように分けるか、分け方を提案します

ここまでは、前に紹介した独裁者ゲームに似ていますね。ですが、独裁者ゲームと異なり、あなたには、Aさんが提案した分け方を拒否することも、受け入れることもできます。あなたがAさんの提案した分け方を受け入れれば、その分け方で二人ともお金をもらえます。しかし、あなたが拒否すれば、二人とも一円ももらえません。

ここで、Aさんは、自分は900円、あなたに100円、という提案をしてきました。あなたは受け入れますか?

 ☆ ☆

自分の利益だけに注目すれば、何もないところから100円もらえるのですから、何ももらわないよりも、もらった方が得です。でも、実験の結果、多くの人は、この提案を拒否します。「不公平」と感じるからです。実は、別の実験によっても、私たちは、利己的な行動をする相手に対し、自分が損をしてでも、相手に罰を与えようとすることがわかっています。

これを利他的懲罰と呼び、社会的な秩序を維持するための働きです。これは個人の行動としては、きわめて不合理なものですが、集団の協調関係を維持するためには欠かせないものと言われています。

商品は安いが反社会的な行動をしている会社の商品を買わない、とか、犯罪が起きたときに、わざわざ時間と労力を割いて、警察に通報する、ひったくり犯を追跡する、などの例は、実際にたくさんみられます。そして、悪い人の決まり文句は「あなたには関係ないでしょう?」というものになります。その通り、実際に関係ないのであり、利己的に振舞うならば、関わらないのが「利口」ということになります。しかし、そこで、あえて関わる、という利他的懲罰は、社会秩序の維持において重要な役割を果たしています。

ただし、利他的懲罰は、それを行う人に喜びの感情を与えるものでもあり、ときに、私刑や、無慈悲なバッシング、場合によってはいじめなどにつながる危険もないわけではありません。シニアの成熟の特徴の一つは、自分とは異なる立場への理解です。利他的懲罰の対象となる人の立場や気持ちを考えることも、シニアならではの能力と言えるのではないでしょうか。

社会を維持するために、私たちに組み込まれた利他的懲罰という本能、あらゆる本能と同じように、それを善用するのは、私たちの知恵にかかっているのです。

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