男性ホルモンは意外と重要
テストステロンといえば、いわゆる男性ホルモンです。
ただ、男性ホルモンという名前ですが、女性も分泌しています。従来、女性は男性の10分の1のテストステロン量と考えられていましたが、近年の研究で、実はそれよりもずっと多く、65歳未満で男性の三分の一程度、65歳以上ではほぼ男女差が見られないということがわかりました。
ところで
男性ホルモンというと、攻撃的になり、反社会的になる、というイメージがありませんか。ですが、男性ホルモンの働きはそれほど単純ではなく、むしろ社会性を高めるのに重要な役割を果たしています。
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よく行われる実験の一つに「最後通牒ゲーム」というものがあります。
一定の金額を被験者の一人に渡して、もう一人の被験者と分け合ってもらいます。例として、太郎さんに10,000円を渡し、それを次郎さんと分け合うとしましょう。
どのように分けるかは太郎さんが決めます。この提案を受けるか拒否するかは次郎さんに任されます。次郎さんが太郎さんの提案を受け入れれば、その提案通りに二人にお金が分配されます。逆に、次郎さんが拒否すれば二人ともお金はもらえません。
あなただったらどのように分けることを提案しますか?
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多くの場合、3,500円渡す、というあたりが平均になるようです。
しかし、
それと知らずにテストステロンの注射を受けた人は、相手に提案する分け前が増えて、平均4,000円を提案します。しかし、テストステロンの注射だと言われて、何の効果もないものを注射された人たちは、提案する金額が減って平均3,000円になるのです。
つまり、この実験で、テストステロン自体では攻撃性は上がらず、社会性が上がるのですが、テストステロンを注射されたという思い込みによって攻撃性が上がり、社会性が下がる、という結果が得られたのです。
さて、
テストステロンは社会関係を保つのみならず、やる気や好奇心を高めます。一方、テストステロンが低いと、筋肉が減りやすくなり、高血圧、糖尿病、がんなど命にかかわる影響も起こります。ですから、テストステロンの値が下がらないように気を付ける必要があります。
加齢によって減る、というイメージが強いテストステロンですが、
実は、
帝京大学の調査で、40~50代の方が、60代以降よりも低いという結果が得られています。テストステロンは
ストレスによって減少するものであり、仕事によるストレスが高いことによって値が下がっていると考えられます。
テストステロンの値を保つためには、過度で長期のストレスに注意することだけでなく、適度な運動、
居場所・仲間の存在なども重要です。
筋肉を刺激すること、仲間と行動すること、社会とのつながりを保つこと、どれも老化を防ぐのに当たり前のことですが、テストステロンを保つためにも重要なようです。