腸内の重要な存在
私たちの腸の内部には、1000種類以上、100兆の細菌が生息しています。この腸内細菌叢が、私たちの健康にとって、重要な働きがあることは、以前から知られていました。
私たちは、胎児の間は、無菌状態で過ごしますが、出産の際に、母親の持つ腸内細菌叢に感染します。その後、年齢や健康状態、食生活などによって腸内細菌の構成は変わっていきますが、これらの細菌たちが私たちの体を守り、ときには悪い働きをするのです。
この腸内細菌叢は、人によって千差万別。人は、それぞれ独自の微生物環境を持っています。ですが、腸内細菌叢全体のゲノム情報を見ると、ほぼ同様であり、多くの人にとって、同様の機能を果たしている、ということがわかりました。
腸内細菌叢は、人が消化できない食物を消化したり、ビタミンを合成したり、免疫作用を提供するなど、重要な役割を果たしています。
そして、この腸内細菌叢のバランスが崩れ、多様性が失われることは、アレルギーや肥満、糖尿病や動脈硬化、肝臓の疾患など、さまざまな病気の原因にもなるのです。
最近では、腸内細菌は、脳とも影響しあっており、腸内細菌叢を改善すると、うつや自閉症の症状を緩和する、とも言われています。
一方、大阪大学の原英二教授らは、高脂肪食によって腸内細菌叢が変化し、それによって肝がんの発症が促進される、ということを発見しました。
腸内細菌叢の研究は、まだ始まったばかりで、その働きもわからないことばかりですが、私たちにとって、想像以上に重要な存在であることは間違いがありません。
良好な腸内細菌叢を保つために、食物繊維をしっかりとり、高脂肪食に偏らないようにしましょう。