下り坂にご注意
山登りにおいては、登りの方が苦しいと思われがちだが、
実は、筋肉への負担や膝関節への負担は下りの方が大きい。
これは、重心が下に移動することによって、衝撃荷重が生まれるためだ。
つまり、足への負担は下りの場合は、体重の何倍にもなるわけだ。
特に、衝撃を筋肉で受け止めず、膝裏を伸ばした状態で、
どしんどしんと下っていると、膝関節ですべての衝撃を受け止めることになる。
これは大変危険なのだ。
一方、下りの衝撃荷重を筋肉で受け止めるのも実は楽ではない。
このとき、大腿四頭筋は伸長しながら荷重を受け止める。
衝撃荷重を、膝を曲げながら受け止めるわけだ。
つまり、筋肉は収縮しながらも、外力の力によって伸ばされるのだが、
このようなブレーキとしての働きをする動きを筋肉のエキセントリック収縮とよぶ。
(逆に、力を発揮しながら筋肉が収縮する動きをコンセントリック収縮という。膝を伸ばす動きは、大腿四頭筋が力を発揮しながら収縮している。)
このエキセントリック収縮というもの、
コンセントリック収縮に比べて強い力を発揮できるのだが、
一方で、筋肉繊維の破壊が起こりやすい。
実は、エキセントリック収縮において動員される筋線維数はコンセントリック収縮よりも少ない。
その少ない数の筋線維が、より強い力を発揮しつつ、
外力に負けて伸長するように動員筋線維数が調整される。
そのため、筋肉が損傷した時に放出される物質(CPK)の量も、
コンセントリック収縮の3倍程度に及ぶ。
ややこしいかもしれないが、要するに、
下りの時の筋肉の動き方は筋肉にとって酷な動きだ、と思ってもらえばいい。
だから、下り道には注意しなければならないわけだ。
ストックを使う、一歩一歩を小さくする、なるべく体重移動を静かに行う、などなど。
そして同時に、筋肉を鍛えておくことも大切なのだ。
次回、このためにどんなトレーニングをしたらいいか、
考えてみよう。